甘辛LOVER

旧:where there is no haiku

111022 id:screwflysolver

【ハロウィン超短編まつり(挿絵なし)2011】
 「おやすみ」のキーワードにスターをつけ終わると、時計の針は十二時を回っていた。明日は月曜だし、俺もそろそろ寝るか。ミケノビッチは僅かばかり残ったミルクパンプキンティーを飲み干して紙パックを潰すと、床のゴミ袋に突っ込んだ。
 にゃあ。
 歯を磨き、用を足して、窓際にあるベッドに入る。
 にゃあ。
 部屋の電気を消すと薄いカーテンから街灯の光が漏れた。
 にゃあ。
 うるさいなあ、もう、なんだよ。ミケノビッチは仕方なく起きてカーテンを開けた。窓の外に居たのは真っ黒な猫だった。しばし見つめ合った後、溜息をつくと、窓ガラスが白く曇った。
 にゃあ。
「飯は出ないよ」
 ミケノビッチは窓を開け猫を中に入れた。カーテンは閉めたが、窓には少しだけ隙間を残しておいた。ベッドの横に積んである服からパーカーを引っ張り出して着込んだ。
 にゃあ。
 足が出ないように気をつけながら肩までしっかり布団を被る。猫はもう一度鳴いたが、ミケノビッチが何もしないのを見て、大人しく丸くなった。

 翌朝、ミケノビッチが目にしたのは一宿の恩を一飯の恨みの仇で返された部屋の惨状だった。


画:http://digi-6.com/archives/51739456.html など

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